座頭市は幼い頃の思い出を忘れかね、今は見えぬ目ながら初日の出を拝もうと妙義山に急いでいた。途中ふとしたことから新助と名乗る旅人から手紙をことづかり、笠間の宿の旅籠、むさしやの女中お仙に届けた。市はそこで行方知れずの父を訪ねる、お咲に会った。一方土地の親分甚兵衛は芸人たちの足元を見て、ショバ代を四分六で寄こせと難題を吹きかけてきた。宿の芸人達は怒ったが、代官、加島と結びついた二足わらじにはどうすることもできなかった。そんなある夜、むさしやに新助が舞いもどった。新助は、代官甚兵衛の命令で、江戸へ強訴したお咲の父を殺した。しかし代官に通じてあるという甚兵衛との約束は被られ、追手におわれて宿に逃げこんだのだった。しかし非情な甚兵衛は、そんな新助をめった斬りにした。ふとしたことからこれを立ち聞した市も何も知らないお咲に真相を打明ける勇気はなかった。そんなある日市は、甚兵衛の様子をさぐりに、その賭場へ行き得意の居合斬りでイカサマを見破り、甚兵衛、代官加島らのど胆を抜いた。だが居合せた加島の用心棒沖は、そんな市の殺気を見抜いていた。市は甚兵衛に狙れているお咲の身を案じて、居酒屋で会った父の思影をやどす老人儀十にあづけた。しかし儀十は酒欲しさにお咲を甚兵衛に売った。代官役宅に閉じ込められたお咲を救い出すために、市は単身関所に向った。怒りにふるえる座頭市必殺の剣は、代官加島、甚兵衛らをなぎたおし、無事お咲を救出した。初日の出を迎えた、太陽が市の孤影を赤々と染めだしていた。
座头市凶状旅座头市血烟街道